祝日の朝、ソファで小児科の予約サイトを開いた。
インフルエンザの予防接種。先週のおたよりに、学校で流行が始まりかけていると書いてあった。
十一月のカレンダーを見た。土曜の枠は、もうほとんど埋まっていた。
七日の土曜に、午前の枠が二つだけ残っている。二つ。ちょうど二人ぶんだ。
押さえて、息を吐いて、それで終わりにしそうになった。

予防接種という言葉は、一つの予定のような顔をしている。
実際は違う。十三歳未満は二回接種だから、茉央も朔も二回ずついる。二人で四回。しかも二回目は、一回目から決まった間隔を空けないといけない。
つまり、一回目を取った瞬間に、二回目の日の範囲は決まっている。決まっているのに、その場では予約できない。予約サイトは、四週間先までしか開いていない。
決まっているのに、今はできない。この組み合わせが、いちばん抜け落ちる。
去年がそうだった。一回目を十一月に取って、二回目を後で取ろうと思って、その「後で」が年明けになった。十二月の土曜は全部埋まっていて、結局一月の中旬になった。
一月の中旬に二回目を打つというのは、流行が始まってから備えるということだ。意味がないわけではないけれど、そうしたかったわけではない。
忘れたのではない。二回目があることは知っていた。ただ、知っているだけで、どこにも置いていなかった。
耕平がコーヒーを挽いていた手を止めて、こちらに来た。
「取れたのか」
「七日の午前。二人とも」
「二回目は」
聞かれて、あ、と思った。
去年のことを、耕平も覚えていたらしい。二回目の帰りに、もう一月だけどな、と二人で話した。
サイトの説明を読んだ。二回目の予約は、一回目の接種が終わったあとに取れる。希望は四週間後、十二月五日の土曜。
「じゃあ、七日の夜に、予約を取る。これを予定にする」
「予約を取る、を予定にするのか」
「する。打つ日だけ入れても、取る日は来ない」
リマインダーを置いた。十一月七日、夜の八時。二回目の予約を取る。
それから、一つ足した。十二月五日の午前は、誰が連れていくか。
「俺が行く。二回目は俺だ」
予約は取れたのに当日誰も動けない、というのは、実際に一度やっている。去年ではなく、一昨年のことだ。

土曜の午前、四人で小児科に行った。
待合室は混んでいた。同じクラスの子を二人見かけて、お互いに、あ、という顔をした。
茉央が先に呼ばれた。戻ってきて、何も言わなかった。腕に丸い絆創膏を貼っていた。
朔は、名前を呼ばれた時点で泣いた。
注射の前に泣いて、注射のときにも泣いて、終わってからも少し泣いた。それから、貼ってもらった絆創膏を見て、泣きやんだ。
「まおちゃんは、なかなかった」
「ないたよ。一年生のとき」
「へえ」
朔は、少し安心した顔をした。

その日の夜八時、スマホが鳴った。
二回目の予約を取る。
朔は風呂に入っていて、茉央は宿題をやっていた。手が空いていた。
サイトを開いたら、十二月五日の午前は、まだ十以上空いていた。
二つ取った。三分で終わった。
去年、この三分が、どこにもなかった。
