家野家のれんらくちょう
共働きの夫婦と子ども2人、猫が1匹。学校と園から届くプリントに追われる家野家の一年を、1話完結で描く連載です。

冷蔵庫の横で、プリントが3枚重なっていた夜
集金袋の締切が今日だったと気づいたのは、夜の九時すぎ。冷蔵庫の横のコルクボードには、十一枚の紙が重なっていた。忘れていたわけではない。ただ、その紙のことを知っているのが、この家でわたしひとりだった、というだけの話。

撮ってみた、それだけ
火曜の夜のことが、ずっと引っかかっていた。土曜の朝、コルクボードの紙を全部はがしてテーブルに並べた。十一枚。一枚目を撮ると、AIは日付をひとつ読み違えた。先生が手で直した箇所だった。

6文字だけ送った
去年の運動会、母は一時間早く校門の前に立っていた。電話で伝えた予定が、途中で少しずつ形を変えたからだ。今年は、六文字のコードをLINEで送った。五分後に電話が鳴った。

運動会は、誰が何時にどこにいるのか
十月二日の予定は、もう家族三人の画面に入っている。それなのに、当日の話を始めて五分で、わたしと耕平の頭のなかがまるで違うことが分かった。日時は共有されていた。誰が何時にどこにいるのかは、どこにも書いていなかった。

紅白帽はどこへ行った
玄関に明日のものを並べて、一歩下がって気がついた。紅白帽がない。持ち物の紙は、何が要るかは教えてくれる。それが家のどこにあるかまでは、どこにも書いていない。

砂ぼこりと、ぬるい麦茶
七時半の校庭は、まだ湿っていた。今年は俺が最初に着いて、シートを敷いた。一日が終わって気がついたのは、今日は一度も「次なに」と聞かなかった、ということだった。

代休の月曜日は、給食がない
月曜が代休だということは、家族全員が知っていた。知らなかったのは、その日に給食がないことと、耕平が出社日だということだった。学校からもらった予定表に書いてあったのは、「代休」の二文字だけだった。

運動会の写真は、二週間で消える
木曜の夜、クラスのLINEに「写真、明日までですよね?」と流れてきた。運動会の写真販売のメールは、二週間前に届いていた。届いた日にいちばん読む気がしなくて、そのあと一度も上に出てこないものが、この世にはある。

遠足のしおりは、両面印刷だった
遠足の前の晩、玄関に並べた荷物を見て、茉央が言った。レジャーシートは、と。持ち物のリストに、その五文字はなかった。AIが読み落としたわけではない。しおりは、両面印刷だった。